商標登録はなぜ重要か?


弁理士児嶋のブログ

令和4年8月6日

商標登録はなぜ重要なのでしょうか。

ブランドの構築は、企業が市場における適正価格を維持し、

不毛な価格競争を回避し、すなわち買い叩かれないための最も効果的な手段です。

(その証拠は、次回のブログで詳しくご説明します。)


そして、企業のブランド価値は、

主に商品名・サービス名・社名に蓄積する需要者の信用によって高まっていきます。

つまり、ブランド価値は商標に宿るのです。


だからこそ、このようなブランド価値を保護する方法は、商標登録しかありません。

すなわち、商標登録によって、ブランドの独占排他権である商標権を手に入れずして、

自社の大切なブランドを守ることはできないのです。


なぜなら日本の商標制度は、前回のブログで述べた通り先願主義なので、

模倣者に先に出願されると、そのブランドは使用できなくなるからです。

あらためて説明しますが、商標権は約12万円で手に入ります。

商標登録は、コスパのよいリスク又はトラブルの回避手段であり、いわば保険なのです。


さらに、商標の登録要件には、特許や意匠とは異なり新規性要件がありません。

したがって、商標を権利化しないという判断は原則としてありえないのです。


どういうことかと言うと、特許や意匠登録には新規性要件があるので、

公知すなわち公に知られた発明やデザインは、自分も含め誰も権利化できません。

これに対して、商標登録には新規性要件が求められないので、

たとえその商標が自分の使用によって既に公知となっていても、

無登録である限り、先に出願した他人に権利化されてしまうのです。

そうなると、その他人から商標の使用停止や商標権の高額買取を迫られる

という理不尽な事態に晒されるリスクから、永遠に逃れられなくなるのです。


もっとも、商標法には、商標を無登録で先に使用してある程度有名にした場合は、

その後に他人に商標登録されても、その商標を使用し続けることができる、

という救済規定があります。これを先使用権といいます。

しかしながら、この先使用権をもってしても、

商標権者である模倣者による商標の使用を差し止めることはできないのです。

商標権は、最も敵に回したくないという意味でも、最強の知的財産権なのです。


以上が、商標登録があらゆる企業にとって極めて重要である理由です。

自社の大切なブランドを模倣者に合法的に取られてしまう前に、

自社の商品名・サービス名・社名は、一刻も早く商標登録することを心からお勧めします。