知財豆知識
中小企業の知財戦略に役立つ豆知識です。ほぼ毎日追加します。
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知財戦略(18)
1)知的財産について:
知的財産(知財)とは、人が生み出した価値ある情報の一切です。
発明やデザインや芸術作品などが典型ですが、それらに限られません。
知的財産の一部は法律で権利化が認められています。
そして、法律に基づいて権利となった知的財産が、知的財産権なのです。
知的財産と知的財産権。
語義の違いを知ってきちんと使い分けたいものです。
2)知的財産権について:
知的財産権のうち、商工業者にとって特に重要な権利は、
特許権、意匠権、商標権、著作権の4つです。
特許権は発明を保護し、意匠権はデザインを保護し、
商標権はブランドを保護し、著作権は著作物を保護する権利です。
このうち著作権だけは創作と同時に自然発生するので、
権利化の手続は不要です。
著作権は権利化の手間がないぶん権利範囲が不明確となるので、
模倣者に対する権利行使は他の知財権よりも面倒です。
3)独占排他権について:
知的財産権の本質は独占排他権、すなわち独占権と排他権です。
独占権は、自己の知財を独占的に実施できる権利です。
排他権は、他者による権利侵害を排除できる権利です。
独占排他権を手に入れるために、人は知財を権利化するのです。
4)中小企業の知財戦略について:
日本の全企業数に占める中小企業の割合は99.7%であるのに、
全特許出願件数に占める中小企業の割合は2割弱にとどまります。
このようないびつな状態を放置してよい理由はありません。
知財戦略は中小企業にこそ必要なのです。
しかし多くの中小企業は、
大企業のように社内に知財専門部署を抱える余裕はありません。
そのような中小企業のためにこそ、弁理士の存在意義はあるのです。
5)知的財産権の行使について:
知的財産権の権利者は権利行使できます。
権利行使とはすなわち、侵害訴訟の提起です。
権利侵害者に対する差止請求と損害賠償請求です。
しかし裁判は最後の手段、いわば伝家の宝刀なのです。
実際には、権利を持っているだけで、
というより特許庁に出願ずみであるだけで、
他者による権利侵害を牽制する効果が大きいのです。
知的財産権を持つ意義は、権利侵害の抑止にこそあるのです。
6)スタートアップについて:
卓越したアイディアで事業拡大を目指すスタートアップ。
日本経済成長の希望です。
しかし、その若い経営者の多くが、
知的財産権で参入障壁を築いて事業と会社を守ることに、
あまりにも無頓着に見えてしまうのはなぜでしょうか。
特に意識が低いと感じるのが、商標権の取得(商標登録)です。
粗悪な模倣ブランド品に市場を荒らされてからでは遅いのに。
賢明な彼らが、なぜわからないのか。
私の説明が拙いのでしょう。
しかし、日本の国益のためにも、是非わかってほしいのです。
7)BCPについて:
BCP(事業継続計画)とは、緊急事態への企業の備えです。
企業が大地震・風水害・大火災・感染症などに遭遇しても、
自社の中核事業を中断せず継続できるようにする計画なのです。
BCPの策定は、大企業よりも中小企業にこそ必要です。
事業中断は企業の存続への致命傷となりうるからです。
よって、周到に練られたBCPは、
中小企業にとって貴重な知的財産であるといえるのです。
8)知的財産権を持つ効果について:
権利者は、自己の知財を独占実施することも、
ライセンス料を取ることもできます。
また、高い技術力やデザイン力、
そして何より強いブランド力のアピール効果も期待できます。
さらに、強い知的財産権は企業の無形資産として評価され、
資金調達や協業や上場やM&Aなどの重要局面において、
有利な立場から関係者との交渉を進めることができます。
権利侵害を排除できることの他にも、
知的財産権を持つメリットは多岐にわたり、
その効果は絶大なのです。
9)知財戦略の検討について:
知財戦略において検討すべき事項は、少なくとも3点です。
第1に、自社のどの知財をどのような形で権利化するのか。
第2に、権利化した知財をどのようにマネタイズするのか。
そして、
第3に、権利化しないと決めた知財をどのように扱うのか。
知財戦略とは、
これらが相互に絡み合って関連する、三元連立方程式です。
全てを同時に検討してこそ、生きた知財戦略となるのです。
理想的にはそうです。
10)侵害訴訟の勝率について:
平成26年〜令和2年の統計によれば、
日本では特許権者による侵害訴訟の勝率は、約3割にとどまります。
しかし、勝訴的和解も勝ちとすれば、勝敗は五分五分となるのです。
しかも、和解金の相場の方が賠償金より高いのです。
よって、権利侵害への対抗手段として、訴訟は有効といえるでしょう。
だからこそ、訴訟せずとも抑止力としての効果も上がるのです。
知的財産は、できる限り権利化しておきましょう。
11)知財の権利化について:
知財戦略の要諦は、適切な知財の早期権利化です。
自社の知財を全て闇雲に権利化しようとするのは、
現実的でも最善でもありません。
権利化すべき知財としない知財との、見極めが重要なのです。
しかし、その見極めは必ずしも簡単ではありません。
経営者は、自社を取り巻くあらゆる経営環境を考慮し、
そして、知財の専門家である弁理士の助言を求めるべきです。
大事な判断なので、弁理士の知見を活用しましょう。
12)知財の権利化について:
自社の知財を全て権利化しようとすることは、お勧めしません。
第1に、現実的ではないからです。
知財の権利化(特に特許)には結構なお金がかかります。
第2に、最善の策でもないからです。
ある種の知財は、権利化しない方が得策である場合があります。
例えば、製品を市場に出しても特殊な製法がばれないような場合、
その製法は特許化せず、むしろ社内で永久に秘匿管理すべきです。
なぜなら、特許出願すれば1年半後に公開され、
特許権を取得しても20年で切れるからです。
ただし、その営業秘密が絶対に社外漏洩しないことが前提です。
最も有名な成功例は、コカコーラの原液のレシピです。
13)早期権利化について:
知財戦略は、企業にとってなぜ重要なのでしょうか。
最大の理由は、
自社の知財管理に無頓着だと他社に真似されて大損するからです。
よって、
知財戦略の要諦は「適切な知財の早期権利化」にあるのです。
14)知財の権利化について:
貴社が今後とも、
小さな商売を狭い地域内で細々と続けることに満足なら、
知財の権利化は必ずしも必要ないかもしれません。
しかし、
事業拡大し成長発展していく野心が少しでもあるなら、
知財の権利化は必要かつ有益な投資なのです。
知財の権利化に要するお金は「費用」ではなく、
自社の無形資産を拡大するための「投資」と捉えるべきなのです。
15)スタートアップについて:
知財戦略は企業の規模や業種を問わず重要です。
しかし、ヒト・モノ・カネの経営資源が不十分な中小企業、
なかんずく創業期のスタートアップにとっては、
周到に考えられた知財戦略こそが成長のための必須条件となるのです。
すなわち、大企業よりも中小企業、
そして中小企業の中でも創業期のスタートアップにおいてこそ、
知財戦略は重大な意義を持つのです。
ただ現実には、大企業ほど自社の知財戦略に熱心なのです。
16)知財ガバナンスについて:
東証と金融庁による昨年のコーポレートガバナンスコード改訂により、
上場企業には実効的な知財ガバナンスの実施が義務付けられました。
すなわち、上場企業は、
知財戦略を重視した経営を取締役会によって行うとともに、
その内容を株主に対し十分に開示する必要があるのです。
この改訂は、コードの直接対象である上場企業だけでなく、
上場企業と取引関係にある非上場企業にも大きく影響するものです。
よって、
あらゆる株式会社は、自社の知財ガバナンスを推進するため、
弁理士の社外取締役への起用をもっと真剣に検討すべきなのではないでしょうか。
日本企業の国際競争力復活のためにも、私自身のためにも(笑)
ぜひそうあってほしいものです。
17)国家の繁栄について:
知財戦略なくして中小企業の成長なく、
中小企業の成長なくして経済の発展なく、
経済の発展なくして国家の繁栄なし。
故に、
知財戦略なくして国家の繁栄なし。
これが弁理士としての私の信条です。
これからも国家の繁栄のため、
中小企業・スタートアップの知財戦略をどこまでも追究します
18)北海道の知財について:
特許庁への出願件数は、
全国が特許6割:商標3割であるのに対し、
北海道は特許2割:商標7割と真逆の傾向です。
北海道では「食と観光」のブランド価値が内地よりも認識されています。
得意分野を更に伸ばしましょう。
商標戦略 (修正中)
1)商標の種類:
商標法の保護対象となる商標は、
自己の商品・サービスについて使用する文字、図形、記号、
立体的形状、色彩、結合、音、位置です。
このように、様々な態様での商標登録が可能ですが、
現状は登録商標の大半が文字と図形であり、今後もそうでしょう。
文字と図形の商標とはすなわち、
商品名・サービス名・社名を表す文字列とそのロゴマークです。
これらの商標をまだ商標登録していない会社は、
他社に商標権を先取りされる前に、いますぐ出願を検討しましょう。
2)商標登録の要件:
商標登録が認められるための主な要件は、
・識別力:普通名称などではないこと
・不登録事由非:公序良俗違反などではないこと
・先願主義:同一又は類似の商標が先に出願されていないこと
・指定商品役務:商標を使用する商品・サービスが明確であること
です(商標法3条、4条、6条等)。
よって、商標出願に当たっては、
以上の要件をクリアしているかどうかをまず吟味すべきです。
そして、いずれかがクリアできない可能性が高い場合は、
商標の一部を修正するなどの適切な対応をすべきです。
そのような場合に、適切な対応をお客様に提案できるかどうかが、
有能な弁理士の腕の見せどころなのです。
3)社名の商標登録:
経営者の方々とお話しさせていただく中で、
・もし権利トラブルになった時は、社名変更すればよいと考えている。
・よって、社名の商標登録をするつもりはない。
というお考えを聞くことが時々、というかよくあります。
しかし、その考え方は必ずしも賢明とは思えません。
社名変更には名刺や看板や広告宣伝の作り直しや、顧客等関係者への周知など、大変なコストがかかります。
さらに、せっかくこれまで社名に蓄積してきたブランド価値(需要者の信用)を一旦全て失うことになります。
ブランド戦略の一環として自らの意思で計画的に社名変更するなら、それでもよいでしょう。
しかし、そうではない不測の社名変更によるコストと損失は、会社にとって甚大です。場合によっては致命的です。
商標登録さえしておけば、そのようなコストと損失の発生を未然に防ぐことができるのです。
そしてなにより、商標登録にかかるコストは社名変更することに比べればはるかに少なくすみます。
社名変更か、商標登録か。
どちらが得かは、火を見るよりも明らかなのではないでしょうか。
4)商品・役務の指定:
商標出願においては、
商品・役務の指定範囲が狭ければ、商標権の効力は不十分となります。
逆に、指定範囲が広すぎれば、
区分(商品・役務のカテゴリー)が増えて、無駄な費用が膨らみます。
狭くなく、かつ、広すぎない。
その最適ラインを攻めようとする意識と技量が、
知財のプロである弁理士には求められるのです。
それができる有能な弁理士に、商標出願は依頼しましょう。
弁理士費用を惜しんで自分で出願すると、ほぼ失敗します。
5)商標の権利化:
特許や意匠とは異なり、
商標については「権利化しない」という選択は原則ありえません。
なぜなら、商標登録には新規性要件がないからです。
つまり、特許や意匠登録には新規性要件があるので、
公知の発明やデザインは、自分を含め誰も権利化できません。
これに対し、商標登録には新規性要件がないので、
たとえその商標が自分の使用により既に公知となっていても、
無登録である限り、先に出願した他人に権利化されてしまうのです。
そうなると、たとえ「先使用権」の主張に成功したとしても、
商標権者である模倣者の商標使用を差止めることはできないのです。
自社の大切なブランドを模倣者に合法的に取られる前に、
商品名・サービス名・社名は一刻も早く商標登録しましょう。
6)商標登録の費用:
商標登録には結局のところトータルいくらかかるのか?
トータルは、特許庁に支払う料金と弁理士に支払う料金の合計額です。
また、出願の区分数(商品・サービスのカテゴリー数)が増えれば、
特許庁に支払う料金が増えます。
1区分の場合、総額約12万円で、うち出願時に約8万円が必要です。
2区分の場合、総額約17万円で、うち出願時に約9万円が必要です。
事業の内容が限定的な中小企業やスタートアップの場合、
大抵は1区分か2区分で十分です。
出願に当たっては、区分数が徒に増えて無駄な出費にならないよう、
商標専門の弁理士に適切な区分数の見極めをさせることが重要です。
なお、私も商標専門の弁理士です。
7)商標権のコスト:
商標登録に要する費用は、
1区分の場合、総費用は約12万円で、うち出願時に約8万円です。
つまり、12万円あれば誰でも、ブランドを10年間独占でき、
さらに好きなだけ更新できる商標権を手に入れることができるのです。
商標登録は10年間有効ですから、
10年で12万円ということは、1年当たり1万2000円なので、
1か月当たりならわずか1000円の出費に相当します。
これに比べて、特許権の取得には50万円以上かかります。
しかも特許権は更新できません。
商標権は、コスト的にも最強の知的財産権なのです。
8)商品のネーミング:
新発売する商品の名前が決まったら、
その商品が売れてブランド価値が発生する前、なるべく発売前に、
商標登録を済ませましょう。
他人に先に商標登録されてしまうと、
使用差止や損害賠償や高額買取を迫られる不安が生じるからです。
そしてその不安を、
この先ずっと抱え続けなければならないからです。
しかもその不安は、
商品が売れて有名になればなるほど、膨らみ続けるからです。
商品名は、1日も早い商標登録が必要です!
9)標準文字:
「標準文字」は、特許庁長官の指定する文字(書体)です。
商標出願において選択することができます。
標準文字を選択するメリットは、
商標に用いるワードを決めた段階で、書体やロゴマークが決まる前に、
いち早く出願することができる点にあります。
したがって、
社名や商品名を決めたら、直ちに標準文字で商標出願すべきです。
商標制度は先願主義だからです。
看板や商品に表示する書体やロゴマークで登録する必要はありません。
文字商標の類否判断は主に称呼でなされるので、
標準文字による商標登録に基づく商標権は、
同一又は類似の称呼(読み方)を生ずるあらゆる商標に及ぶからです。
なお、図形と文字で構成されるロゴマークが既に決まっている場合は、
そのロゴマークで出願することをお勧めします。
1つの商標登録で、図形と文字の両方が保護されるからです。
ただし、その図形が他人の商標権と抵触していないことが条件です。
商標権が最強の知的財産権である4つの理由
特許権、意匠権、商標権の中で、
最強の知的財産権は商標権であると考えます。
その理由は4つです:
第1に、商標権だけが、半永久的に存続できる権利だからです。
第2に、商標権だけが、新規性がなくても成立する権利だからです。
たとえ公知の商標でも、他人に先に権利化されれば勝てません。
また先使用権をもってしても、商標権者による使用は排除できません。
敵に回すと最も恐ろしいのが、商標権なのです。
第3に、商標権は、水際対策が最も有効な権利だからです。
税関による知的財産権侵害物品の輸入差止は、年間3万件に及びます。
このうち97%が商標権侵害品、いわゆる偽ブランド品なのです。
特許権や意匠権の侵害判断が税関職員には困難である一方、
商標権の侵害は見ればすぐわかるからです。
第4に、商標権は、コスパが優秀な権利だからです。
商標権は約12万円あれば誰でも手に入れることができます。
これに対し特許権は50万円以上かかる上、更新できません。
なお、最安は意匠権の約10万円です(ただし図面を自作する場合)。
以上から、
商標権こそが最強の知的財産権であると言えます。
私が「商標専門弁理士」を標榜するのも、
最強の知的財産権でありながら過小評価されている商標権を、
日本の中小企業にあまねく普及すべきである、
との使命感に駆られたからです。
というわけで、
御社の大切なブランド(商品名・サービス名・社名)は、
直ちに商標登録し、最強の知的財産権で半永久的に守りましょう。
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9)地域団体商標について:
「地名+普通名称」の商標登録は原則認められません。誰か一人が独占するのはよくないからです。しかし、地元の農協や商工会なら地域活性化に役立つので例外的に認められます。これが地域団体商標制度なのです。
10)商標登録について:
「徳島ラーメン◯◯」での商標登録は現時点で、奥屋、麺王、麺八の3店のみです。他の200店超の皆様!貴重なブランドを便乗使用されて無駄な損害を被る前に、早めの商標登録をおすすめします。
11)全国的認識について:
「地名+普通名称」の商標登録は、地域団体商標以外は原則認められません。しかし、特殊な装飾文字であったり、特徴的な図形と結合したり、長年使用して全国的認識を得ていれば、諦めなければ認められる可能性はあるのです。
12)地域団体商標について:
特産品のブランド価値が高まり、販路を広域拡大できます。他地域の類似ブランドを排除できます。ライセンス収入を得ることもできます。その結果、地域経済が半永久的に潤います。これが地域団体商標登録のメリットなのです。
13)シームレス戦略とは:
意匠と商標を継ぎ目なくつなぐ知財戦略です。自社製品の形状について、まず意匠権で独占実施し、意匠権が切れる25年後までに商標登録要件の自他識別力を発生させて、その後は商標権で永久に独占実施するのです。
14)ブランドについて:
中小企業は自社ブランドを構築すべし。2022年度の中小企業白書はそう訴えています。ブランドは取引価格に大きく寄与して値崩れを防ぐからです。だから、ブランドを守る商標登録はとても大事なのです。
15)商標登録について:
商品の普通名称は商標登録が認められません。誰でも使える必要があるからからです。よって、商品「りんご」に商標「アップル」は登録不可です。しかし商品「電子計算機」に商標「アップル」は登録OKなのです。
16)商標審査について:
拒絶理由通知が意見書提出で登録査定に覆る確率は、ある統計によれば、拒絶理由が「識別力なし」の場合で4割台、「類似商標あり」の場合は8割台です。拒絶理由に納得できなければ諦めるべきではないのです。
17)不服審判について:
商標・特許・意匠の審査結果にどうしても納得できなければ、拒絶査定不服審判を請求できます。審査官よりも経験値の高い審判官3人に見直してもらうことで、登録査定に覆ることが少なからずあるのです。お金はかかりますが。
18)商標審判について:
統計によれば、「識別力なし」を理由とする拒絶査定が不服審判で覆る確率は6割台です。審査で負けても逆転は可能なのです。勝負するか否かは、審判費用と勝率と権利化へのこだわりとを比較衡量した上での経営判断です。
19)識別力について:
商品のネーミングは、他と識別できるユニークさが大事です。識別力のない名称でもロゴと組み合わせれば商標登録は可能ですが、その商標権では、ロゴだけ変えた模倣商品を排除することは難しいのです。
特許戦略(7)
1)ビジネスモデル特許について:
特許法の保護対象は、物、方法又は物を生産する方法の発明です。そして発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作です。よって、ビジネスモデルはITを利用したアイディアでなければ特許になりにくいのです。
2)特許出願について:
特許出願においては、攻防一体の権利化を図ることが重要です。自社発明の本質を漏れなくカバーし、なおかつ、競合他社の参入をも未然に遮断しうるクレームを作るのです。これができることが、よい弁理士の条件なのです。
3)特許出願について:
特許出願に必要な情報は、発明の内容と目的、従来技術、先行技術文献、図面、実施例、発明者及び出願人です。その上で、お客様の事業計画と競合他社や市場の動向等をも踏まえて、最善の出願書類を仕立てるのが私の仕事です。
4)実用新案権について:
実用新案権は、考案(小発明)を保護する権利です。出願すれば無審査で権利化できますが、権利行使するためにはどうせ審査(技術評価)を受けなければならず、出願の手間も特許と変わらないので、実用新案登録を考えるなら特許出願すべきです。
5)オープンクローズ戦略とは:
自社知財のうちコア技術のみを独占し周辺技術は開放する典型的な特許戦略です。独占はノウハウの秘匿管理又は特許発明の独占実施、開放はライセンス供与又は標準化又は権利放棄です。目的は市場規模の拡大なのです。
6)ビジネスモデル特許について:
ビジネスモデル特許では他社のビジネスを必ずしも排除できません。しかし、他社は特許の対象であるITシステムを使えないので非効率となり、権利者は競争優位となります。だからビジネスモデル特許は有益なのです。
7)特許出願は全部でいくらかかりますか?
特許庁費用も含めた出願から登録までのトータル金額は、請求項数3の場合、大企業は約55万円、中小企業は約47万円、小規模企業やスタートアップは約43万円です。このうち、出願時にかかる初期費用は約31万円です。
意匠戦略(12)
1)意匠法について:
保護対象である意匠は、物品、建築物及び画像のデザインすなわち、形状、模様、色彩及びこれらの結合で、視覚を通じて美感を起こさせるものです。とはいえ美感のハードルは高くなく、煩雑でなければ大丈夫です。
2)意匠出願の全バリエーション:
呪文「全部ジュネーブ圏内、夕陽組が感動」→全体意匠、部分意匠、ジュネーブ改正協定、部品の意匠、建築物の意匠、内装の意匠、優先権主張、秘密意匠、組物の意匠、画像意匠、関連意匠、動的意匠。
3)部分意匠と部品の意匠:
「部分意匠」とは、物品の部分のデザインを権利化できる制度です。独創的で特徴ある部分を取り入れつつ意匠全体で侵害を避ける巧妙な模倣を排除できます。混同しがちですが、「部品の意匠」は部分意匠ではなく全体意匠です。
4)組物の意匠と内装の意匠:
「組物の意匠」は、システムデザインを権利化できる制度です。「内装の意匠」は、店舗等の内装デザインを権利化できる制度です。どちらも、複数の構成物品のデザインをまとめて権利化できる点が特長なのです。
5)関連意匠と秘密意匠:
「関連意匠」は類似意匠を権利化できる制度で、「秘密意匠」は登録意匠を非公開にできる制度です。前者はモデルチェンジに、後者は販売の様子見に有用です。が、どちらも意匠法の中に関係条文が散在しており要注意です。
6)関連意匠の全条文:
呪文「天を仰いで関連意匠、新居浜ツーツー、風呂の蓋、鮒」→意匠法10条、21条、22条、26条の2、27条。新居浜からモールス信号を虚な目で打電し、風呂の蓋の上で跳ねる鮒を捌く板前、というヴィジョンで記憶。
7)意匠戦略について:
特許権に比べて、意匠権は権利化費用が格段に安く、存続期間が5年も長く、しかも類似範囲にまで及びます。よって、特許が技術的に難しい場合や、一つの製品に特許と重ねて、意匠登録を検討することは有益なのです。
8)知財ミックス戦略について:
一つの製品に特許権と意匠権と、さらに商標権をも併せ持つ戦略をいい、強力な権利を構築するための常套手段です。このような全方位型の権利を創り込むことは貴社にとって有益です。お金をかける価値は十分あるのです。
9)意匠権の対象拡大について:
令和元年の意匠法大改正で、UIに工夫をこらした画像や、ユニークな形状の建築物や、統一感ある店舗内装のデザインについても意匠権がとれるようになりました。先行登録意匠がまだ少ない今がチャンスなのです。
10)登録されない創作容易意匠:
呪文「泳市、廃校、蓮仏」(およいち、はいこう、れんぶつ)→置き換え・寄せ集め・一部の構成の単なる削除・配置の変更・構成比率の変更・連続する単位の数の増減・物品等の枠を超えた構成の利用転用、の意匠。
11)意匠登録出願の補正をしたら補正却下決定をもらったときの全対処法:
呪文「保身別再訪」(ほしんべつさいほう):補正却下決定不服審判請求、新出願、別出願、再補正、放置。今後の弁理士人生において唱えることはほぼないであろうニッチな呪文。ただし過去の弁理士試験には出ました。
12)意匠登録は全部でいくらかかりますか?
特許庁費用も含めた出願から登録までのトータル金額は、図面を外注しない場合、税込で約10万円です。このうち、出願時にかかる初期費用は約9万円です。
著作権戦略 (5)
1)著作物とは:
思想又は感情を創作的に表現した作品であり、その創作と同時に著作権が自然発生します。よって、表現されていないアイディアや創作的でない表現は著作物ではないので、著作権は発生しないのです。
2)著作権侵害について:
訴訟では、依拠性と類似性を立証できるかが勝負です。依拠性とは、後の作品の作者が前の作品を知っていたということです。よって、知らずに作ったのなら偶然同じ作品でも著作権侵害にはならないのです。
3)著作権侵害について:
訴訟では、依拠性と類似性を立証できるかが勝負です。類似性の判断は専ら過去の判例に依存します。著作権は審査を経ずに自然発生するため、意匠や商標のような審査基準(類否判断基準)が存在しないからです。
4)著作物とは:
思想又は感情を創作的に表現した作品であり、その創作と同時に著作権が自然発生します。作者は人間に限られるので、猿が描いた絵に著作権は発生しません。しかしAIが描いたマンガについては議論の余地があるのです。
5)著作権の登録について:
著作権は創作によって自然発生するので、商標登録のような権利化手続は不要です。しかし、著作権法にも創作年月日や権利移転や作家の実名等を文化庁に登録する制度はあるのです。後で揉めた時に役に立つからです。
国際戦略 (8)
1)海外展開について:
世界各国の知財制度は属地主義を採用しているので、日本の知財権は国外では通用しません。よって、日本企業が輸出や出店など海外展開するときは、その国で権利侵害しないか確認して、その国で権利化すべきなのです。
2)国際出願について:
特許・意匠・商標にはいずれも国際出願制度があり、1回の手続で世界各国に出願することができます。国際出願時点が新規性や先願主義の基準となるので、各国の審査において不利に扱われないのです。
3)国際出願について:
特許はPCT出願、意匠はハーグ出願、商標はマドプロ出願といい、いずれも条約名です。世界の主要国はどの条約にも加盟していますが、台湾が加盟していない点は要注意です。台湾で権利化するには直接出願しかないのです。
4)国際出願について:
出願書類はジュネーブの世界知的所有権機関(WIPO)経由で指定した国に送られます。このフローは特許も商標も意匠も共通です。2か国以上への出願なら国際出願が便利で有利で、かつ多くの場合安くつくのです。
5)国際出願について:
PCT出願するなら国内出願から1年以内にすべきです。新規性要件の基準時を国内出願日にできるからです。また、遅くとも1年半以内に出願しなければなりません。国内出願が公開されて新規性が失われるからです。
6)知財の国際化について:
国際出願は、日本でも世界でもコロナ禍と関係なく増え続けています。急速に進展する知財の国際化に対応できることが、今の特許事務所に求められる必須条件なのです。当国際特許事務所も、看板倒れにならぬよう精進します。
7)国際出願の費用について:
商標の国際出願(マドプロ出願)に要する費用は、例えば米国、中国、韓国の3か国に、色彩のない商標を1区分で出願して、各国の審査が順調に済んだ場合は、特許庁とWIPOと弁理士料金の合計で約32万円です。
8)国際出願の費用について:
特許の国際出願(PCT出願)は、中小企業が日本語でオンライン出願し交付金を申請すれば約24万円です。ただし各国の審査費用まで含めると1国100万円以上かかるので、そのための資金調達が2年半以内に必要です。
共創戦略 (2)
1)オープンイノベーションとは:
独自知財を持つ中小企業が、設備や販路が充実した大企業と提携して新事業を進めることです。優れた知財が大きな市場で早く実現されるメリットがあり、日本でも近年活発化しています。対等な関係が成功の鍵なのです。
2)モデル契約書について:
中小企業が大企業との提携交渉で不利な条件を飲んで知財を搾取されるなどあってはならないことですがよくあります。そこで政府は段階ごとのモデル契約書を提示しています。交渉前に目を通して理想形を知るべきです。
水際戦略 (2)
1)輸入差止とは:
模倣品の輸入を税関で止めてもらう制度です。差止実績は年間3万件に達し、うち97%は偽ブランド品すなわち商標権侵害物品です。よって商標権者には大変有益な制度なのです。税関への申立は弁理士がサポートします。
2)輸入差止について:
税関申立に必要な準備は3つです。①模倣品を入手して自社製品との類否を専門的に判断し、②税関職員が模倣品を見破るための識別箇所を整理し、その上で、③地元を管轄する税関の知財調査官と事前交渉を行うのです。
補助金戦略 (3)
1)補助金について:
中小企業庁の一部の補助金は、知財戦略にも有効活用できます。建物や機械設備などの有形資産だけでなく、知的財産権という無形資産の獲得にも補助金を活用できるのです。知財も補助金もわかる弁理士が力になります。
2)中小企業庁の補助金について:
事業再構築補助金とものづくり補助金は、補助対象も補助金額も補助率も非常に好条件です。しかしそれ故に競争が厳しく、採択率は5割前後です。挑戦的で現実的な事業計画をいかに説得力をもって提示できるかが勝負なのです。
3)中小企業庁の補助金について:
知財経費は3種類:①技術導入費(知財権・ライセンス取得)、②専門家経費(弁理士の助言謝金)、③知的財産権等関連経費(弁理士の手数料、翻訳費用)。上手に活用しましょう。
闘魂戦略(10)
1)闘魂とは:
「闘魂とは、自分自身に打ち克つこと」は、燃える闘魂・アントニオ猪木氏の言葉です。ファイティングスピリッツを向ける対象は対戦相手ではなく自分自身なのです。弁理士児嶋も闘魂を燃やします。
2)いつ何時:
「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」は、プロレスラー・アントニオ猪木氏の名言です。相当の覚悟と自信がなければ出ない言葉だと思います。弁理士児嶋は、いつ何時、どなた様のご依頼でもお受けします。
3)道はどんなに険しくとも:
「道はどんなに険しくとも、笑いながら歩こうぜ」は、アントニオ猪木氏の言葉です。武士は食わねど高楊枝、という意味でしょう。孤高のプロフェッショナルの美学です。弁理士児嶋も、笑いながら歩きます。
4)人は歩みを止めたとき:
「人は歩みを止めたとき、挑戦をあきらめたときに年老いていく」は、プロレスラー・アントニオ猪木氏の言葉です。弁理士児嶋は、これ以上老いたくないので不断に挑戦し続けます。
5)リングに上がる前から:
「リングに上がる前から、勝負は始まっている」は、プロレスラー・アントニオ猪木氏の言葉です。周到な準備なくして「行けばわかるさ」の境地には至らない、ということです。弁理士児嶋も、専門知識の更新を怠りません。
6)元気があれば:
「元気があればなんでもできる」は、アントニオ猪木氏の名言です。本当になんでもできた元気な人生の晩年に難病に冒された彼が言う重い言葉です。弁理士児嶋も、今健康であることに感謝して永く元気でいたいです。
7)一寸先は:
「一寸先はハプニング」は、プロレスラーで事業家のアントニオ猪木氏の言葉です。試合でも経営でも先を恐れず楽しみにする前向き思考が、精神の安定を生み事態を好転させるのでしょう。弁理士児嶋も見習いたいです。
8)負けなければ:
「負けなければ、人は強くなれない」は、プロレスラー・アントニオ猪木氏の言葉です。敗北や挫折を知らなければ改善点がわからず、現状からの進歩もないのです。敗北と挫折を知る男・児嶋も、これから強くなります。
9)馬鹿になれ:
「馬鹿になれ、とことん馬鹿になれ」は、アントニオ猪木氏による詩の一節です。常に愚直であれ、と解釈します。彼は愚直に多くのことを成しました。弁理士児嶋も、もともと馬鹿ですがとことん馬鹿になりたいです。
10)花が咲こうと:
「花が咲こうと咲くまいと、生きていることが花なんだ」は、プロレスラー・アントニオ猪木氏による詩の一節です。結果に固執しすぎて本質を見失うな、との示唆でしょう。ーーー私の好きな言葉です。