第2章:商標登録で得られる7つのメリット
第5節:商標登録表示を誇示できる
商標登録を行うことで得られるメリットの第5は、商標登録表示の誇示です。
商標登録表示とは、登録商標の横に添える「登録商標第〇〇〇〇〇〇〇号」やRマーク(®️)などの表示をいいます。
商標登録表示は、ブランド価値の向上や模倣抑止を実現する戦略的ツールであり、中小企業・スタートアップが競争力を確保するための簡単で有効な手段です。
商標登録表示がもたらす3つの効果
商標登録表示は、消費者に対し、そのブランドが登録商標であり法的に保護されていることを明確に伝える役割を果たします。この表示によって、商標権者のブランドへのこだわりや信念が示され、ブランドの信頼性が向上します。
また、商標登録表示は企業のマーケティング戦略にも活用されます。特に、競争が激しい市場では、商標登録表示が競合他社との差別化を図る重要な手段となります。消費者に「このブランドは正式に登録された商標である」という印象を与えることで、購買意欲を促進する効果が期待できます。
さらに、商標登録表示は模倣者に対する警告としても機能します。すなわち、模倣行為が法的リスクを伴うことを認識させ、模倣ブランドの市場流通を未然に抑止する効果が期待できます。特に、模倣品の出現が企業の売上や信用に大きな影響を与える場合、この効果は非常に重要です。
Rマークが広く利用されている
日本国内においては、正式な商標登録表示である「登録商標第〇〇〇〇〇〇〇号」の使用よりも、実務上はRマーク(®️)が広く利用されています。
例えば、登録商標「child island」であれば、「child island®️」のように表示されるのが一般的です。
「®️」は「Registered trademark」(登録商標)の略であり、正式な商標登録表示に比べてスペースを取らず、視覚的にわかりやすい点が普及の理由と考えられます。特に国際展開を視野に入れる企業にとっては、海外でも通用するRマークが選ばれる傾向にあります。
TMマークにも意味がある
一方、Rマークと同様によく使われるTMマーク(™ )は、商標登録表示とはみなされません。そのため、未登録商標に使用しても後述するような刑事罰の対象にはなりません。
未登録商標が「商標出願済み」であることを示したい場合、TMマークを使用することで法的リスクを回避しつつ、その旨をアピールすることができます。商標制度は先願主義であるため、出願済みであることを示すことにも一定の法的意義があります。
商標権者に与えられた特権
商標法には、商標権者が商標登録表示をつける努力義務が規定されています(商標法第73条)。この規定により商標登録表示の付与が推奨されているものの、罰則規定はありません。したがって、商標権者が商標登録表示をつけるかどうかは自由です。デザイン上の制約などから、つけない場合も少なくありません。
しかし、登録商標以外の商標に商標登録表示や紛らわしい表示(Rマークなど)をつけた場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます(商標法第74条、第80条)。以上から、商標登録表示は商標権者に課せられた義務というよりも、むしろ商標権者に与えられた特権であると言えます。
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第七十三条 商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、(中略)その商標にその商標が登録商標である旨の表示(以下「商標登録表示」という。)を付するように努めなければならない。
第七十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 登録商標以外の商標の使用をする場合において、その商標に商標登録表示又はこれと紛らわしい表示を付する行為
(以下略)
第八十条 第七十四条の規定に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
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このように、商標登録表示は単なる法的表示を超え、ブランド価値の向上、模倣抑止、消費者の信頼向上など、多面的な意義を持つ重要な手段です。
特に競争の激しい市場では、商標登録表示を積極的に活用することが、中小企業・スタートアップが持続的な競争力を確保するための戦略となります。