商品名やサービス名の商標登録が必要なのはわかるが、
社名の商標登録も必要なのか?
と、疑問にお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
実際に、私もお客様からそのようなご質問をいただくことがよくあります。
以下、その疑問に対する私の回答です。
なぜ、社名も商標登録すべきなのでしょうか?
それは、多くの場合、社名は商品に付され、サービスとともに提供されるからです。
このとき、社名は商品やサービスのブランドすなわち商標として使用されているのです。
特に、造語などのユニークな社名は消費者・ユーザーの記憶に定着しやすいため、
商標として非常に有効なのです。
しかし、例えば御社の社名と同一又は類似の商標を競合他社が先に商標登録すれば、
御社が引き続き社名を商標として使用するためには、
商標権者であるその他社から、商標の使用許諾をしてもらうことが必要となります。
日本の商標制度は先願主義すなわち先に出願した者勝ちだからです。
そして、合法的に商標権者となったその他社が、そんな許諾をすることはまずありません。
なぜなら多くの場合、その他社は、
御社が創業以来苦労して積み上げてきたブランド価値を横取りすることが目的だからです。
その結果、御社は社名を商標としては使用できなくなります。
もし無断で使用すれば、商標権者から使用差止と損害賠償を請求されるからです。
具体的には、例えば「パナソニックの食洗機」や、
「ライザップのダイエット指導」のような、
「◯◯社の◯◯」というマーケティングが一切できなくなってしまう、ということです。
ちなみに、パナソニックの食洗機は我が家にもあります。
非常に高性能・高機能で、家事負担の軽減に重宝していますが、
この食洗機には「NPTA4」という整理番号のような名前がつけられているだけです。
これは、食洗機の商品名で売るよりも、社名のブランドで売る方がよく売れて、
かつ値崩れしにくい、というパナソニック社の賢明なブランド戦略によるものでしょう。
余談ですが、
「パナソニック」は、平成20年に「松下電器産業」が社名変更したものです。
それまで商品のブランドとして世界市場で確立していた「Panasonic」を社名とし、
また、国内で用いてきた「National」ブランドも「Panasonic」に一本化し、
商品と社名のブランドを統一することによって、ブランド力の抜本強化を図ったのです。
参考)https://holdings.panasonic/jp/corporate/about/history/chronicle/2008.html
さらに余談ですが、
「Panasonic」というブランドは、Pan(汎)とsonic(音)を組み合わせた造語です。
当初は、昭和30年に生産された輸出用スピーカーのブランドだったのです。
Pan と sonic の間にあえて a を入れたところに、考えた人の非凡なセンスが窺えます。
参考)https://holdings.panasonic/jp/corporate/brand/our-brand.html
話を戻します。
企業が社名を商標登録すべき理由はまだまだあります。
次回は、「ならば、社名を商標として使用しなければ、商標登録は不要では?」
というもっともな疑問に対し、明快に反論したいと思います。
(続く)