前回の記事では、「記述的商標」とは何か、そしてその商標が商標法3条1項3号に該当し、商標登録が認められないことを説明しました。
今回は、さらに詳しく、商標法3条1項3号の条文について掘り下げてみましょう。
1.商標法3条1項3号の条文について
まず、商標法3条1項3号の条文を確認してみましょう。
「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」
要するに、この条文は、その商標が商品の産地や品質などを普通に示すものである場合、その商標は登録されないということを示しています。
今回は、この条文の中から「商品の産地」「販売地」「役務の提供の場所」について詳しく見ていきます。
2.商品の「産地」「販売地」、役務の「提供の場所」とは?
商標法において、「商品の産地」「販売地」「役務の提供の場所」とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
特許庁の審査基準に基づいて説明します。
・地理的名称による商標
商標が国内外の地理的名称、例えば国家、州、市町村、観光地、湖、山、公園などを表す名称や地図である場合、その商標は商品の「産地」や「販売地」、役務の「提供の場所」として認識されることがあります。
これは、消費者がその地理的名称を見て、その土地で商品が生産または販売されている、もしくは役務が提供されていると一般的に認識するためです。
・国家名や著名な地理的名称による商標
商標が国家名やその略称、旧国家名、またはその他著名な地理的名称である場合も同様に、その商標は商品の「産地」や「販売地」、役務の「提供の場所」として認識される可能性があります。
3.具体的な例
例えば、「富士山コーヒー」という商標があったとします。
富士山という地理的名称は多くの人が知っており、この商標を見た消費者は、そのコーヒーが富士山周辺で生産されたものであると認識するでしょう。
この場合、「富士山コーヒー」という商標は商品の「産地」を示すものとして認識されるため、商標法3条1項3号に該当し、商標登録が認められない可能性があります。
4.次回予告
次回は、商品の「品質」、役務の「質」について詳しく説明します。引き続き、商標の基本を分かりやすく解説していきます。