前回は、「商品の産地」「販売地」「役務の提供の場所」についてお話ししましたが、今回は商品の「品質」、役務の「質」について説明します。
1 記述的商標とは?
まず、記述的商標についておさらいしましょう。記述的商標とは、商品の産地や品質などを普通に示すものであり、商標登録が認められません。記述的商標は、商標法3条1項3号に規定されています。
「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」
2 商品の「品質」、役務の「質」とは?
それでは、商品の「品質」、役務の「質」について具体的に見ていきましょう。
(1)商品等又は役務の提供の用に供する物の内容について
商品等の内容を認識させる商標が商品の「品質」、役務の「質」の表示と判断される場合について説明します。
(ア)書籍や電子出版物などの場合
商標が著作物の分類・種別等の一定の内容を明らかに認識させる場合には、商品の「品質」を表示するものと判断されます。
- 商品「書籍」についての商標「商標法」「小説集」
- 商品「録音済みのコンパクトディスク」についての商標「クラシック音楽」
(イ)放送番組の制作や配給の場合
商標が提供する役務たる放送番組の分類・種別等の一定の内容を明らかに認識させる場合には、役務の「質」を表示するものと判断されます。
- 役務「放送番組の制作」についての商標「ニュース」「音楽番組」「バラエティ」
(ウ)貸与される映写フィルムや録音済みのCDなどの場合
商標が、その役務の提供を受ける者の利用に供する物の分類・種別等の一定の内容を明らかに認識させる場合は、役務の「質」を表示するものと判断されます。
- 役務「録音済みコンパクトディスクの貸与」についての商標「日本民謡集」
- 役務「映写フィルムの貸与」についての商標「サスペンス」
(エ)題号等として認識される場合
商標が需要者に題号又は放送番組名(以下「題号等」という)として認識され、かつ、当該題号等が特定の内容を認識させるものと認められる場合には、商品等の内容を認識させるものとして、商品の「品質」又は役務の「質」を表示するものと判断されます。
(オ)新聞、雑誌等の場合
新聞、雑誌等の「定期刊行物」の商品については、商標が需要者に題号として広く認識されていても、当該題号は特定の内容を認識させないため、本号には該当しないと判断されます。
(2)人名等の場合
商標が人名等を表示する場合については、例えば次のとおりとします。
(ア)音楽関連商品について
商標が需要者に歌手名又は音楽グループ名として広く認識されている場合には、その商品の「品質」を表示するものと判断されます。
(3)飲食物の提供に係る役務の場合
商標が国家名、その他の地理的名称であり、特定の料理(フランス料理、イタリア料理、北京料理等)を表示するものと認められるときは、その役務の「質」を表示するものと判断されます。