1.結合商標の分離
リラ宝塚事件(最判S38.12.5)
「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標」は、分離可能。
→「各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合している商標」は、分離不可。
つつみのおひなっこや事件(最判H20.9.8)
「その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き」、分離は許されない。
2.商標の類否判断
しょうざん事件(最判S43.2.27)
「商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。」(一般論)
「商標の外観、観念又は称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、従って、右三点のうちその一において類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない」(判断基準)
3.商品・役務の類否
橘政宗事件(最判S36.6.27)
「指定商品が類似のものであるかどうかは、商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互に誤認混同を生ずるおそれがないものであっても、それらの商標は商標法にいう類似の商品にあたると解するのが相当である。」
→同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認される虞があると認められる関係にない場合は、非類似。
引用商標に文字列を追加した文字商標の分離判断(知財高裁判例)
分離不可(一連一体だから)=登録OK
日本食育防災士:分離不可、引用商標「防災士」 R6(行ケ)10095
UNITED GOLD:分離不可、引用商標「UNITED」R6(GK)10066
Jimny Fan:分離不可、引用商標「Jimny」R6(GK)10007
Julius Tart:分離不可、引用商標「TART」R4(GK)10121
三橋の森の一升パン:分離不可、引用商標「一升パン」R3(GK)10160
CORE ML:分離不可、引用商標「CORE」R1(GK)10151
分離する(理由は様々)=分離抽出部分が類似なら登録NG、非類似なら登録OK
ペスリ会/東京TMSクリニック:分離する(二段表記だから)、引用商標「東京TMSクリニック」R5(GK)10122
リフナビ大阪:分離する(大阪は地名だから)、引用商標「リフナビ」R5(GK)10010
ハートデンキサポート:分離する(電気サポートは役務名だから)、引用商標「HEART」R4(GK)10093
EMPIRE STEAK HOUSE:分離する(ステーキハウスは役務名だから)、引用商標「EMPIRE」R4(GK)10087
チロリアンホルン:分離する(チロリアンは相当程度強い印象だから)、引用商標「チロリアン」R3(GK)10108
総本家駿河屋:分離する(駿河屋は著名だから)、引用商標「駿河屋」R1(GK)10111
朔北カレー:分離する(カレーは商品名だから)、引用商標「サクホク」。
ただし朔北とサクホクは非類似、登録OK R4(GK)10122
図形+文字:分離する(文字と一体化していないから)、引用商標「文字」、判例多数