コンセント制度の導入

弁理士児嶋のブログ

令和

 最新の商標法改正によって、本年4月1日以降の商標出願には「コンセント制度」が適用されることになりました。その目的は、商標登録要件の緩和にあります。

 すなわち、従来の商標法の下では、他人の先行登録商標と同一・類似の商標を同一・類似の指定商品役務について出願した場合には、商標登録を受けることができませんでした。

 しかし今後は、このような場合であっても、先行登録商標の商標権者の同意を取り付けることができれば、商標登録を受けることが可能になります。これが、コンセント制度です。


 具体的には、従来、特許庁審査において、「先行登録商標との類似」を理由に拒絶理由通知を受けた場合、その判断を覆して商標登録を受けるには以下の4つの方法がありました。

  1)「類似していない」旨の意見書を提出して、特許庁の判断を覆す。

  2)無効審判請求等によって、先行登録商標の登録を取り消す。

  3)先行登録商標の商標権者と交渉して、商標権を譲渡してもらう。

  4)「アサインバック」(説明は割愛)という高難度の技を使う。

 以上に加えて、今後は以下の選択肢が加わるというわけです。

  5)先行登録商標の商標権者から出願についての同意(コンセント)を取り付ける。


 コンセント制度は諸外国では広く導入されています。日本政府・特許庁は、この制度によって、日本企業のブランド選択の幅が広がることを期待しているようです。

 とはいえ、先行商標権者の同意を取り付けることは、上記4)のアサインバックや3)の商標権譲渡ほどではないにせよ、そのハードルは決して低くはないでしょう。なぜなら、ほとんどの商標権者は自己のブランドを独占するために費用をかけてまで商標登録をしたはずだからです。

 また、2)の審判請求や1)の意見書提出は、必ずしも成功するとはいえません。


     結局、商標出願において最も大事なことは、出願前に先行商標調査を網羅的に行なって、拒絶リスクの高い出願はしないということです。商標専門弁理士の役割の一つはここにあります。


     次回は、「他人の氏名を含む商標」について解説します。