最強の知的財産権とは?
弁理士児嶋のブログ
令和4年7月23日
主な知的財産権といえば、特許権、意匠権、商標権、実用新案権、著作権の5つでしょう。
では、これらのうち「最強の知的財産権」はどれでしょうか?
まず、特許権、意匠権、商標権を見てみましょう。
これらは、保護対象はそれぞれ発明、デザイン、ブランドと異なりますが、いずれもその保護対象を独占し、他者を排除できるという点で、とても強力な知的財産権です。これらはいずれも特許庁による厳格な審査を経て成立する権利です。
一方、実用新案権と著作権については、審査を経ずに成立する権利です。
そのため、権利の外縁が明確でなく、ゆえに権利行使が容易でないという点で、特許権、意匠権、商標権と比べるとやや見劣りがします。
話を戻しましょう。
強力な知的財産権である特許権、意匠権、商標権の中でも、最強の知的財産権は商標権である、と言えます。
その理由は以下の4点です:
第1に、商標権だけが、新規性がなくても成立する権利だからです。
特許権と意匠権は「新規性」(出願時に公知ではないこと)がなければ成立しません。
御社が先に発明やデザインを実施していれば、もはや他人は特許権や意匠権を取得できないのです。
したがって、御社が特許権や意匠権を取得しないことのデメリットは、自社の発明やデザインを独占できないことにとどまります。自由に実施し続けることはできます。
これに対し、商標権は「新規性」がなくても成立します。
御社が先にブランドを使用していても、先に出願した他人は商標権を取得することができます。
したがって、御社が商標権を取得しないことのデメリットは、自社のブランドを独占できないことにとどまりません。使用できなくなるかもしれないのです。
なお、商標制度には「先使用権」という救済規定はありますが、それが認められるには裁判で立証するための面倒な手間と少なからぬ費用が必要です。
よって、権利化しないことのデメリットが、商標権は特許権・意匠権とは異質で、かつ、特許権・意匠権に比べてはるかに深刻であるのです。
すなわち、味方にすれば最も頼もしく、敵に回せば最も恐ろしい知的財産権が、商標権なのです。
第2に、商標権だけが、半永久的に存続できる権利だからです。
特許権と意匠権は、存続期間が終了すると消滅します。
特許権は出願から20年、意匠権は出願から25年です。
権利消滅後は一般に開放され、誰でも自由に実施できてしまいます。
これに対し、商標権は10年ごとに何度でも好きなだけ更新できるので、
事実上半永久的にブランドを独占し続けることができるのです。
第3に、商標権は、水際対策が最も有効な権利だからです。
税関による知的財産権侵害物品の輸入差止は、年間3万件に及びます。
このうち97%が商標権侵害品、いわゆる偽ブランド品なのです。
特許権や意匠権の侵害判断が税関職員には困難である一方、
商標権の侵害は見ればすぐわかるからです。
第4に、商標権は、コスパに優れた権利だからです。
商標権は約12万円あれば誰でも手に入れることができます。
これに対し特許権は50万円以上かかる上、更新できません。
なお、最安は意匠権の約10万円です(ただし図面を自作する場合)。
以上から、
商標権こそが最強の知的財産権であると言えます。
したがって、企業が最優先で取得すべき知的財産権は商標権なのです。
ちなみに、本当は特許も意匠もできる弁理士児嶋が、
あえて「商標専門弁理士」を標榜する理由は、
最強の知的財産権でありながらいまだ過小評価されている商標権を、
日本中の中小企業に一刻も早く普及すべきである、との使命感に駆られたからです。
というわけで、
御社の大切なブランド(商品名・サービス名・社名)は、
直ちに商標登録し、最強の知的財産権=商標権で確実に守りましょう。
©️特許庁