以下、図の左から右にかけて順番に説明します。
1.優先日:
優先日は、原則として国内特許出願日を意味します。優先日は、以後の全ての手続の基準となる日です。
2.PCT国際出願:
優先日から12か月以内に行います。各国への出願日が一律に優先日となるため、各国での審査が有利になります。
日本の出願人は、日本の特許庁に日本語で出願します。
出願費用は、中小企業軽減措置を適用して35万円です(出願後に一部返金されるため、正味費用は27万円です。詳しくは下記参照)。
この段階ではまだ、どの国で特許を取りたいかを決める必要はありません(ただし台湾はPCT非加盟なので別途出願する必要あり)。
3.国際調査機関の見解書/国際調査報告:
優先日から16か月以内に通知されます。国際調査機関(日本の特許庁)が先行技術を調査し、特許がとれるかどうかの見解を示します。国際調査機関の見解には法的拘束力はありませんが、各国への国内移行(下記6)後の各国特許庁の審査に大きな影響を与えるものです。
したがって、もし否定的な見解が示された場合、この段階で必要な対応(請求項の補正)をします。その場合は追加費用がかかります。
4.国際公開:
優先日から18か月後に行われます。国際公開は、世界知的所有権機関(WIPO)によって全世界に対して行われます。
なお、国内特許出願の出願公開も、出願日から1年半後なので、特許庁によってほぼ同時期に行われることになります。
5.国際予備審査:
優先日から22か月以内に請求できます。国際予備審査機関(日本の特許庁)が事前審査を行います。
請求するかどうかは任意です。国際調査後の対応(請求項の補正)が適切かどうか自信がない場合や、請求項だけでなく明細書や図面の補正が必要な場合などに、請求します。その場合は追加費用がかかります。
6.国内移行:
優先日から30か月以内に、各国の国内審査に移行する手続を行います。各国ごとに、出願書類の翻訳文を作成し、代理人を決める必要があります。したがって、国内移行には十分な準備期間と費用が必要です。遅くとも1か月前までに、どの国で特許を取りたいかを最終決定してください。
主な費用は、各国語への翻訳料、各国特許庁への出願料・審査請求料、及び各国代理人の手数料です。審査対応も含めて、1か国当たり100万円以上かかる場合がありうることを想定する必要があります。
したがって、闇雲に広く国を指定するのではなく、事業にとって真に必要な国を厳選することをおすすめします。
7.その他(国内特許出願について):
国内特許出願の手続は、上記のPCT国際出願の手続とは別途進行します。国内出願日から3年以内に、特許庁に出願審査請求をする必要があります。
国際出願手数料(用紙30枚まで): 217,700円
オンライン出願減額適用: - 49,100円
送付手数料: 17,000円
中小企業軽減措置適用(1/2): - 8,500円
調査手数料(日本国特許庁・日本語): 143,000円
中小企業軽減措置適用(1/2): - 71,500円
優先権の書類の送付の請求に係る手数料 1,400円
児嶋国際特許事務所手数料: 100,000円
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出願費用合計: 350,000円
注1)国際出願後に、中小企業は「国際出願促進交付金」を特許庁に申請することにより、上記国際出願手数料の半額の84,300円 ( = ( 217,700 - 49,100 ) / 2 ) が後日戻ってきます。したがって、出願にかかる正味費用は、265,700円( = 350,000 - 84,300 )となります。
注2)国際調査に対応する場合、国際予備審査を請求する場合、及び各国への国内移行手続を行う際には、追加費用が発生します。特に、国内移行手続は1カ国あたり100万円以上かかることがあります。
算出根拠:
(国際出願関係手数料表)
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/kokuryo.html
(中小企業軽減措置)
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_keigen_shinsei.html
(児嶋国際特許事務所料金表)
https://www.kojima-ip.com/%E6%96%99%E9%87%91%E8%A1%A8
(国際出願促進交付金)
https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tesuryo/pct_kofu_shinsei.html