今回は、
の続き(シリーズ完結篇)です。
さて、社名の商標登録の必要性をお客様に説明すると、
「権利トラブルになったら社名変更するから、今、社名の商標登録は必要ない。」
というお考えをお聞きすることが時々、というかしばしばあります。
このような発言は特に、創業後日の浅いスタートアップの若い経営者の方々に多いです。
しかし、この考え方は必ずしも賢明であるとは言えません。
なぜなら、社名変更は、名刺や看板や広告や宣伝の作り直しや、
顧客を含む関係者への周知など、会社にとって大変な手間とコストがかかるからです。
また、これまで社名に蓄積してきたブランド価値が、一旦全て白紙に戻ってしまうからです。
そして、たとえ権利トラブルのあとで社名変更をしても、
社名変更前の過去の権利侵害の事実はなかったことにはならないからです。
よって、相手からの損害賠償請求を回避することはできません。
このように、権利トラブルに起因する不測の社名変更は、
会社に甚大なダメージを及ぼします。致命傷となる可能性も少なくありません。
かつて「松下電器産業」が「パナソニック」に社名変更したように、
確固たるブランド戦略の下で自らの意思で行うケースとは全く異なるのです。
これに対し、今、社名の商標登録さえしておけば、
そのような不測のダメージを未然に、かつ完全に防ぐことができるのです。
そして、商標登録にかかる手間とコストは、
社名変更にかかる手間とコストに比べれば、はるかに少なくすむのです。
将来、権利トラブルになった時に、望まない社名変更を強いられるのか。
それとも今、社名の商標登録を済ませて、
今後ずっと権利トラブルの不安なく安心して事業を展開していくのか。
経済的にも精神的にもどちらが賢明かは、火を見るよりも明らかでしょう。
このように、社名の商標登録にはメリットしかありません。
それを経営者が今すぐ行わない理由は、どこにもないのです。
社名の商標登録の不作為は、株主や従業員に対する背信行為ですらある、
と言っても過言ではない、と私は思います。